糖尿病の合併症と検査
合併症を防ぐために
糖尿病の方にとって、合併症や悪化を防ぐことは非常に重要な課題です。
網膜症、神経障害、腎臓の障害、さらに心筋梗塞、脳梗塞、他の動脈硬化性疾患など、目配りするべきことは多いといえます。 おひとりお一人の状態により以下のような検査を受けていただく事があります。定期的に検査する場合もあります。
糖尿病網膜症の検査
専門眼科への定期的な受診をお勧めしています。必要であれば当院にてデジタル眼底カメラ(無散瞳で可能)を施行して、網膜に糖尿病による出血や白斑がないかなどを調べます。異常があれば、専門眼科を紹介いたします。 レーザー光凝固など治療が必要な場合もあります。異常が無くても、専門眼科での定期的なチェックをお勧めしています。
糖尿病神経障害の検査
足先のしびれ、痛み、冷感、ほてり、こむらがえりなどの症状が出ることがあります。下肢腱反射や知覚検査を必要に応じて施行します。 糖尿病性自律神経障害(便秘や下痢、胃の動きが悪いなどの胃腸症状、起立性低血圧、膀胱の機能障害、勃起障害、汗の出方の異常など)に対しては、当院のみならず、各専門科とも連携して対処します。
糖尿病腎症の検査
血液検査、尿検査(一般検尿、尿中アルブミンなど)を定期的に施行します。 すでに腎機能がかなり悪化している方は、透析治療を視野に入れて、専門の腎臓内科にも受診してもらいます。また、腎機能の悪化により貧血が出ることがあり、鉄の代謝のマーカーやエロスロポイエチン(赤血球を作らせる物質)を調べて、必要あればエリスロポイエチン製剤の注射やHIF阻害製剤の内服処方を定期的に行います。
脂質異常症、高血圧の検査
糖尿病では脂質異常や高血圧の合併が多くなります。糖尿病に合併すると、心筋梗塞や脳血管障害の危険が何倍も高くなります。脂質は血液検査を定期的に行います。高血圧は診察時の血圧だけでなく、家庭血圧(自宅で自分で血圧を測定した値)で特に早朝の高血圧が無いかをできるだけ調べてもらうようお勧めしています。
動脈硬化の検査
糖尿病では動脈硬化の進行が様々な病変を引き起こします。 必要に応じて、ABI/PWVを測定し、血管年齢(血管の硬さ)や下肢の動脈が狭くなっていないか、閉塞していないかを調べます。また、カラードップラーエコーで頸動脈の壁の厚さ(IMT)やプラークというコレステロールの塊が無いかを調べます。
狭心症/心不全/心房細動の検査
糖尿病では心筋梗塞の発症の危険が非常に高くなります。
心疾患が疑われる場合は、まず当院で胸部X線撮影、心電図や心臓エコー、血中NT-proBNPなどを定期的にチェックします。必要に応じて、提携病院を紹介受診していただき心臓の冠動脈CTにより冠動脈が細くなっていないか、トレッドミル運動負荷心電図検査、心臓エコー検査、必要あれば心臓の負荷シンチなどを行います。強い狭窄が疑われる場合は心臓カテーテル検査を行い、特に胸部症状がある場合など必要あればステント挿入治療を施行する事があります。
心房細動が疑われる場合は上記の検査に加え、ご自宅で携帯型の長時間心電図(1日から14日)をつけてもらい検査致します。心房細動があると心臓内にできた血栓が脳に飛んで脳梗塞を起こす危険があります。心房細動は自覚症状が全くない場合も多く、先に脳梗塞を起こしてその後に色々検査した結果、心房細動が発見される場合も多くあります。心房細動が発見された場合は提携病院の循環器内科で精査し可能であればアブレーション治療を選択することが近年増えています。また抗凝固薬を服薬する必要があります。睡眠時無呼吸が関係していることも多く、その検査治療も考えます。
脳血管の検査(非緊急時)
糖尿病では脳梗塞の発症の危険が高くなります。当院で頸動脈エコーを定期的に行い、必要がある場合は、提携病院にて、脳MRI(脳全体の状態をみて脳梗塞や虚血の有無などを調べます)、脳MRA(脳の中の血管の状態を調べます)で脳血管の狭窄や閉塞の有無、脳動脈瘤が無いかなどを調べます。緊急性のある問題として、手足の軽度の麻痺や言葉がでづらいなどの脳梗塞初期症状について知っておいてもらうことが重要です。
糖尿病による足病変
足の潰瘍や壊疽がないかを見ます。糖尿病で神経障害や動脈硬化が進行している方では、火傷や靴づれや小さい足の傷から感染を起こして、ひどい病変に進行していくことがあります。重症化すると下肢の切断が必要なこともあり、大変恐ろしい病変です。当院でも感染への対処や可能な範囲での皮膚病変のケアを施行します。ある程度以上重症の方は提携病院の糖尿病フットケア外来、皮膚科、形成外科、整形外科などを紹介します。いずれにしても総合的な糖尿病の管理による予防が大切になります。